このコーナーはみなさんから寄せられた質問に答えた内容を紹介したものです。練習の参考になれば幸いです


相 談

高校でハンド部の指導にあたっています。ウチのチームはタテブロを基本戦術としており、あとは三枚目前ブロックからの45勝負、三枚目アウトブロックからのずらし、そして守って速攻で攻めます。一つ一つのプレーはチーム全体が理解していると思いますが、上位進出まであと一歩というところでいつも負けてしまいます。先日も地区予選で敗れシードを逃してしまいました。(15−16、前半一点リードから逆転負け、後半立ち上がりの相手の速攻が致命的でした)
生徒もやる気があり、一生懸命練習しているのに勝たせてやれない自分が腹立たしく情けなくなりました。
負けた原因を生徒と話し合ったところ、生徒たちは「セットで点が取れなくて走られたのだからオフェンスを練習したい」と言いましたが私は「守りきれないからセットにになってしまい、走れなかった。だからディフェンス練習を」と言い、生徒とのイメージの違いが大きいことに初めて気付き愕然としました。今まで勝負所で負けてきたのはそこに原因があったのかと思い、今まで自分が持っていたハンド観は何だったのかと、ハンドボールが分からなくなりました。
取り留めのない話ですが、私の高校時代の恩師はすでに他界しており相談できる人が身近にいなかったので何か御助言をと思い書き込みさせていただきました。今までの教え子たちに自分が教えてきたことは正しかったのか自信が持てなくなってしまいました。最近ではこのままではいつまでたっても同じことの繰り返しではとさえ思えます。


          


 まず、ハンドボール観というのは、人それぞれあってしかるべきもの、違っていて当たり前のものだろうと思います。その思い入れが強ければ強いほど周囲と衝突するでしょうが、強い個性が集まることによってパワーが生じます。あとは衝突しながらもうまくバランスを取れば良いのです。

 そのバランスを取るのが監督の役割です。選手たちのハンドボール観を大切に伸ばしながら、1つの方向を与えてやるのです。

 そのためには、まず、監督が自分のハンドボール観を絶対的に信じることです。時には軌道修正もあるでしょうが、すべてを賭けて自分の信ずるところを突き進むべきです。その姿を選手たちは見ています。生半可な姿勢は選手に動揺を与えます。挙句の果てには「見くびられ」たり「なめられ」たりします。

 ディフェンスが大切だと思うのならば、それで良いのではありませんか。ただし、教え方をもっと工夫する必要があると思います。なぜDFが大切なのかを、選手たちにもっとわかりやすく具体的に説明し、徹底的に理解させるべきです。

 ゲームをたくさん見て、あるいはビデオで、「何が原因で勝ち負けが決るのか」もっとしっかり分析すべきです。自分達に当てはめてみて考えても、「セットで点を取れない」「ディフェンスが悪い」という漠然とした「思い」ではなく、「なぜセットで点を取れないのか」「ディフェンスのどこが悪いのか」を、もっともっと細かく分析するのです。

 そうやって突き詰めてみると、最終的にはフットワークとパスワークが優劣を決める大きなポイントであることに気づくと思います。(シュートは特にスピードが無くてもタイミングとコースで決められます。いわばテクニックの問題ですなのです)

 フットワークはDFでもOFでもその土台となるものです。これが無ければコンビネーションそのものが成り立ちません。

 DF練習といっても、鍛えられてない選手でいくら守備のコンビネーション練習をしても、腰が高いければマンツーマンで簡単に抜かれてしまいます。相手のすばやい動き、鋭く変化する動きについていくだけではなく、その先を読んで止めるには、相手の上を行くフットワーク力が求められるのです。

 また、オフェンス練習にしても、フットワーク力の無い選手がいくらコンビを組む練習をしても、DFに1つ1つの動きや勝負ポイントを先読みされて、守りきられてしまいます。

 セットは分解すれば、2×2、3×3の連続です。2×2、3×3がうまくできれば、セットはスムーズに流れるはずなのです。そして、2×2、3×3の基礎はやはりフットワークなのです。

 すでにお気づきのように、ハンドボールの基本はフットワークだということなのです。DFにしてもOFにしてもフットワークなのです。言い換えれば、やり方次第でフットワーク練習がディフェンス練習にもオフェンス練習にもなるということなのです。

 そしてこのフットワークを有機的に結びつけるのがパスワークです。沈み込んで急激に方向転換する瞬間に、ちゃんと胸の位置にすばやいパスを出してやれれば、そのターンは美しくきわだって生きてきます。せっかくすばらしいターンをしてDFを振り切っても、パスが前ではなく後ろにきたら、あるいは胸ではなく足元にきたら、せっかくのターンが台無しになってしまうのです。

 すばらしいフットワーク力と、すばらしいパスワーク力を備えたチーム。これに、試合で勝負が分かれるのはどういうときか(しなくても良い反則をしたり、フォローに行きそびれたり、簡単にノーマークシュートを外したり、ふてくされてチームの雰囲気をこわしたり、多くは自分達の小さなミスが原因です)ということを事あるごとにしっかり理解させてやれば、勝利は向こうの方から転がり込んでくるはずです。

 指導する上で重要なことは、選手とのコミュニケーションをしっかり取るということ、そしてそのことによって選手の目を輝かせるということです。これはとりもなおさず選手の個性を伸ばしてやるということにつながります。なすびはなすびなりに、きゅうりはきゅうりなりに大きく育ててやってください。