このコーナーはみなさんから寄せられた質問に答えた内容を紹介したものです。練習の参考になれば幸いです


相 談

 僕は右利きの右サイドです。
中学の時にはそれなりに通用してたけど、高校に入って、あんまり・・・・なので何か上手くなる方法はないでしょうか?

 中学では通用していたけれども高校になって通用しないというのは、具体的にどういうプレーがどういう風に通用しなくなったのでしょうか。その辺がわかればもう少し細部に渡って説明できるのですが、とにかくサイドシュートを決めることができるようになるためのいくつかのステップを示してみます。

 まずは、シュートの説明に入る前に、サイドプレーヤーの仕事は何か、を押さえておきましょう。

サイドプレーヤーの仕事

  @サイドシュートを打つ
  A回り込みシュートを打つ
  B相手DFを広げる
  C攻撃のきっかけをつくる
  DDFを引き付けて45度にシュートを打たせる
  Eパスをつなぐ
  Fポストへパスを入れる
  G空走りをしてDFをかく乱する
  H第1次速攻を仕掛ける

 おおむね以上のようなことではないでしょうか。
 この場合、『どうやったらシュートが決まるのか』ということは大変重要なことなのですが、見られたとおり、たくさんあるサイドプレーヤーの仕事のうちの一つに過ぎません。同じサイドプレーヤーでもフェイントが上手で、的確なパスが送れて、回り込みシュートが打てて、よく走る選手と、シュートだけという選手は、守る方にとって見ても守り方には大きな差が生じます。前者のように何でもできる選手を守るときには、選手の息づかいから位置・視線・ステップの踏み方など、あらゆる動きに注視しなければならず、後者のような場合はシュートのときだけ気をつけておれば良いということになります。DFの集中力には限界がありますから、そうなれば総合力に優る選手の方が、シュートまで行ける可能性が大きくなります。
 何を言おうとしているのかもうおわかりだと思いますが、シュートテクニックを磨くと同時に、サイドプレーヤーらしい動きができるように、フットワークの練習やパスの練習も平行して行わなければ、思うような効果が望めないということです。

 さて、右利きの右サイドですから、いわゆる『逆サイド』ですね。当然左利きの方が有利なのですが、右利きでも基本は同じだと思います。 つまり…

  1. ボールをもらってから、0〜1歩で打つように心がける
  2. なるべく中へ飛び込む
  3. 滞空時間を長くする
  4. 打点を高くする
  5. ムリなシュート(確立の悪いシュート)は打たない

 ということではないでしょうか。

 1. については、45度とのタイミングが非常に大切になってきます。日ごろの練習で、45度からパスをもらうタイミングを話し合い、繰り返し練習してください。

 この場合、45度OFが45度DFとサイドDFの間を攻めて、サイドDFを引き付けて、どれくらいのスペースがあればシュートまで行けるのか、知っておく必要があります。サイドDFは45度OFを見ていますから、サイドにパスが渡った瞬間、エンドライン方向へ移動しながら振り向きます。振り向いた瞬間、もうサイドOFはキャッチと同時に左足(右足)で踏み切ろうと  している、こういったタイミングがベストでしょう。つまり、右足でキャッチし、左足でジャンプする(1歩)のを基本とし、時にはキャッチと左足でジャンプするのがほとんど同時(0歩)でも  正しい姿勢でシュートに行けるようにするのが理想です。
 この「タイミング」と「空きスペースの間隔」が大事なのです。サイドはDFが一人しかいませんから、エンドライン側から守られることはありません。従って、エンドラインから1mぐらいのところからシュートして決まるようになれば、いつでも得点するチャンスができるわけです。これはチームにとっても大きなメリットとなります。

 2. については、シューターと2本のゴールポストを結ぶ線の角度が大きければ大きいほど、シュートの決まる確立が高くなることは誰にでも理解できるでしょう。

 シュート態勢に入るコースには「中へ入る」「エンドラインと平行に入る」「ゴールポストに向かって入る」の3通りありますが、基本的には「中へ入る」ことを勧めます。「ゴールポストに向かって入る」場合は「エンドラインと平行に入る」それだけ打つスペースが小さくなります。「エンドラインと平行に入る」場合でも徐々にキーパーに近づきますので、打つタイミングが少なくなります。 それでも選手によっては「平行に入る方が打ちやすい」という選手もいますので断定はできませんが、まず最初に練習するには「中へ入る」ことを勧めます。
 
 3. については、中へ飛び込んだ場合最も効果的です。キーパーはある程度シュートポイントを予測して位置取りをしますので、その予測を超える滞空時間があれば、キーパーの予測ポイントを外し、必ず空きスペースが大きくなります。

 それと、キーパーは最終ポイントを予測して瞬間的に動きますが、滞空時間が長ければキーパーの方が先に動きますので、サイドシューターはその逆へ打てば良いということになります。特に股下へ打つ場合は、いかにキーパーの足が上がるまでガマンできるかどうかにかかってきます。

 4. については、正しい姿勢で腕を高く上げると、キーパーはまず手で取ろうと思うのです。キーパーが手で取ろうと思っている間に、その高い打点から足でしか取れない場所(腰から下)へ打つんです。そうすると手から足への一瞬の切り替えの間(スキ)を衝いて、シュートを決めることができるのです。

 よく体を倒して横になるような格好でシュートを打つ人もいますが、キ―パーにとってみれば、サイドシューターの打点が低ければ、上からかぶさっていくと的を絞るのが比較的容易になるのです。最終的に体を倒すというのは良いんですが、最初は正しい姿勢で、打点を高くして、中へ飛び込むようにしてください。その方がキーパーは的を絞りにくく、最終ポイントを予測しにくいのです。

 5. については、イザ6m内に飛び込んでも充分な態勢でない、充分な角度でない場合があります。 「しまった!どうしようか」と思ったら打たないことです。45度やセンタープレーヤーに返しましょう。DFに押された場合は不自然な倒れ方をして、7mスローをもらいにいきましょう。無理して打ったら審判に流されて、逆速攻を食らうのが落ちです。

 良いサイドプレーヤーはシュートが決まる確率を瞬時に判断し、絶対に冒険はしません。7mスローかフリースロー狙いに行くものです。

 では、もう少し細かいシュートテクニックについてお話します。

 良いタイミングで中へ飛び込んだ後、どこを狙うか、というこてですが、まずはキーパーの体のまわり、体のすぐ近くを狙う練習をして下さい。

 @頭の上・顔横  
 相手のシュート練習の時に、キーパーのクセをしっかりチェックしておいてください。手の下りるキーパーかどうか、動かずに位置取りで取ろうとするキーパーなのか、積極的に動いて取るキーパーなのか、などです。
 手の下りるキーパーならば、高い打点から腰横あたりを狙ってシュートに行く途中で、その意思を断ち切り、頭の上や顔横へ打ち込むのです。キーパーはシューターが腰横を狙っていると思ってますので、必ず手が下ります。その瞬間、腰横を見たまま頭の上や顔横へ打つのです。
 ガマンして着地寸前に頭の上へ打つのも効果的ですが、手の下りないキーパーならばやめたほうが良いでしょう。

 A腰横  
 肩を入れて高くジャンプし、腕を高く上げて、キーパーの顔やその周辺をボーッと見ながら(心は腰横にある)、キーパーの腕がまだまっすぐ上へ伸びきっている間に、キーパーのベルトの横あたりへスピードボールを打ち下ろします。キーパーは棒立ちのままで、シュートはゴールポストの下から30cm位の所へ突き刺さるはずです。

 B股下  
 股下シュートは、サイドプレーヤーの滞空時間がどれだけ長いかでほぼ決まります。 がまんして、がまんして、着地ギリギリの所で、キーパーをボーッと見ながら、キーパーのゴールから遠いほうの足首へ当てるようにしてシュートを打ちます。早く打てばキーパーの足に当たりますが、ガマンできれば、キーパーの足が上がっているはずです。
 キーパーの中には股下にヤマをはり、わざと足を上げ、もう一度足を閉じて取る選手がいます。こういうキーパーの場合は、最初から股下を狙いそこへシュートすると見せかけ、最終的には閉じた足のすぐ横を打つようにします。これもガマンして相手の足が閉じるのを待たねばなりませんから、滞空時間が重要なポイントとなります。

 全般的に言えることは、「決めたい」と思うコースを見てはいけないということです。要はキーパーを騙せば良いわけで、キーパーに違うコースを狙っていると思わせれば良い、ということなのです。
 目で、姿勢で、腕の位置で、手首の角度で、体全体の雰囲気で、キーパーを錯覚させることができるようになるまで、何回も何回も繰り返しサイドシュートの練習をしてください。キーパーもシュートを取るために必死になって練習しますから、それ以上の練習をしなければなりません。練習中のサイドシュートの時間は短いですから、練習前、練習後の自主練習が最も大事です。


 以上サイドシュートについて述べてきましたが、これらは左右共通して言えることばかりです。右サイドだからといって特に変わることはありません。あるとすれば、回り込みシュートが打ちにくい、ということぐらいだろうと思います。
 私は右利きの右サイドで素晴らしい選手を何人か知っていますが、彼らに共通して言えることは、滞空時間が非常に長いということと、股下へ打って決めるのが非常に上手い、ということです。 今後の練習の参考になれば幸いです。


サイドプレーについては編修ビデオ「サイドの達人」にたくさん収録してありますので、参考にしてください。